高タンパク食は腎臓に高負担なのか?
トレーニーにとって、タンパク質は欠かせない栄養素ですよね!
体重1kgあたり2g以上食べた方が良いとか、除脂肪体重1kgあたり3gが良いとか。
何が本当に正しいのか分からないまま、自分に合うのはどれくらいかな?と手探りで調整している方も多いと思います!
タンパク質を沢山食べて、その分だけ筋肉つけば良いと思いますよね。
僕もそう思います(笑)
ただ、その時に気になるのは、タンパク質を大量に食べても、体に影響はないのか?ということ。
今回は、高タンパク食が腎臓に影響を与えるのか?について紹介します!
なぜ高タンパク食は賛否両論あるのか?
高タンパク食は体に良いのか、悪いのか、本当のところは分かっていません。
真実はいつも一つ!なんですが、迷宮入りの難題です(笑)
では、なぜ体に良いのか、悪いのかが明確になっていないのか?
普通に考えると、高タンパク食を食べ続けた人たちと、そうでない人たちで実験をして確かめれば良いじゃないか!と思いますよね。
これは「介入研究」と言われているものです。
でも、介入研究によって腎機能と高タンパク食の関係を実験で確かめることは、倫理的にできないのです。
なぜなら、体に悪影響があるかもしれない高タンパク食を、人で実験するなんて人道的に許されないですよね。
もし仮に、その実験で高タンパク食群の人たちの腎機能が低下して、人工透析が必要になってしまった!なんてことになればシャレになりません。
だから、高タンパク食が体にいいのかを動物で実験することはできても、人で実験することは難しいのです。
というわけで、高タンパク食が体に影響を与えるかどうかは、明確に分かっていないのです。
そもそもなぜ腎臓に負担を与えると言われているのか?
腎臓の主な役割は血液を濾過して、不要になった老廃物や塩分を体外へ尿として排出することです。
濾過の役割を果たしているのは、「糸球体」と言われているもので、一つの腎臓に100万個ほど存在しています。
心臓から運ばれてきた血液は、この糸球体で濾過されて、綺麗になった血液が再び体内を巡るわけです。
この糸球体で濾過された原尿には、アミノ酸、ブドウ糖、ミネラル、なども含まれています。
実はこの原尿の99%は尿細管で再吸収されて、体内の水分量の調整、イオンバランスの調整、体内pHの調整などを担っているのです。
腎臓は1分間に1Lもの血液を濾過すると言われています。
そのため、血液中のアミノ酸が増えると、糸球体が忙しく働くことになります。
こういった背景から、高タンパク食は腎臓に負担をかけるのではないかと言われているのです。
長年の議論に一石を投じた研究
腎機能と高タンパク食の関係について、介入研究で確かめることは倫理的に難しいことは説明しました。
そこで、科学者たちは「コホート研究」によって、その関係性を評価してきました。
コホート研究とは
現時点(または過去のある時点)で、研究対象とする病気にかかっていない人を大勢集め、将来にわたって長期間観察し追跡を続けることで、ある要因の有無が、病気の発生または予防に関係しているかを調査します。
出典:国立がん研究センタ(https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/cohort_study.html)
このコホート研究によって、腎機能と高タンパク食の関係について、少しずつ分かってきています。
2011年にアメリカの研究グループが、腎機能が正常な女性3121名を11年間追跡調査しました。
この研究では、タンパク質の摂取源を
- 赤身肉や加工肉が中心の西洋的な食事
- 魚や白身肉、豆類などが中心の食事
- 野菜や果物が中心の食事
の3つのグループに分けて、腎機能との関係を評価しています。
結果として、「赤身肉や加工肉が中心の西洋的な食事が最も腎臓病の発症リスクが高い」ことが示されたのです(Lin J et al., 2011)。
また、2017年にはシンガポールの研究チームが、男女63,257名を対象に平均15.5年間の追跡調査を行いました。
その結果として、「赤身肉の日常的な摂取が腎疾患のリスクを上昇させる」ことが示唆されたのです(Lew QJ et al., 2017)
こういった研究報告を受け、ドイツの研究グループが
「赤身肉や加工肉が腎機能の低下に繋がる可能性があり、白身肉や豆類などのタンパク源は影響はない」
との論文を発表しています(Kamper AL et al., 2017)。
つまり、結論としては、
- 牛や豚などの赤身肉、加工肉は腎機能の低下につながる
- 鶏肉、魚類、豆類などは腎機能の影響が少ない
ことが示唆されています。
特に、加工肉に関しては死亡率やその他疾患との関連も示唆されている報告もあるので(Piet A, 2019)、なるべく避けた方がいいかもしれません。
ただ、コホート研究などは絶対的な相関を示すものではなく、マスのデータとして相関があったよ!と示すものなので、万人に当てはまる訳ではありません。
ご自身の体調と相談しながら、普段の食事に気をつけると良いのではないでしょうか。
参考文献:
1) Lin J et al., Am J Kidney Dis. 2011 Feb;57(2):245-54
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21251540
2) Lew QJ et al.,J Am Soc Nephrol. 2017 Jan;28(1):304-312
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27416946
3) Kamper AL et al.,Annu Rev Nutr. 2017 Aug 21;37:347-369
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28637384
4) Piet A, Eur J Epidemiol. 2019; 34(4): 351–369
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6451725/